本稿は、言語教育を通して異文化認知力を育てる重要性が叫ばれる中、日本語を学ぶスペイン人大学生が様々な日本語と日本文化に触れ、その体験が各自の複言語・複文化履歴の一部となり内省を深め、更にはそれが今後の日本語学習への動機づけになってほしいと願い、欧州言語バイオグラフィーを授業に取り入れた実践報告である。質的及び量的分析の結果、一般的には言語バイオグラフィーが生徒の日本語および日本文化とその他の言語文化に対する認知内省に役立っていることが分かった。一方で、生徒間の内省熟成度の相違や情報源の偏り、ネイティブの日本語に触れる機会の不足の深刻さも明らかになった。